孫正義育英財団は、財団生および第6期支援人材応募者を対象としたオンラインイベント「次の時代を創る若者へのメッセージ」を2022年5月28日に開催しました。本イベントには、孫正義育英財団 副代表理事である山中伸弥 京都大学iPS細胞研究所 名誉所長/教授が登壇し、医学、研究の道に進んだきっかけや、研究者として大切にしていること、iPS細胞作製のヒントとなったエピソードなどについて講演したほか、参加者からの「人生を賭けて成し遂げたいビジョンは?」などといった質問に答えました。イベントの動画はこちらからご覧ください!
人生のモットー「VW」
お父さまの病気をきっかけに医学の道に進み、今の医学で治せない病気を研究の力で克服することを目指し臨床医から研究医に転身した山中副代表理事。大学院で学位を取得後、留学したアメリカで当時の研究所長から人生のモットーで研究者として成功するための秘訣である「VW(Vision &Work Hard)」を教わり、ビジョンを持つことの大切さを学んだと留学時代の話を振り返りました。
そして帰国後、日米の研究環境の差に苦しみながらも、奈良先端科学技術大学院大学で研究室を持つという大きなチャンスをつかんだ当時、助教授で無名だった山中副代表理事が研究室に入ってくれる大学院生を集めるために大事にしたのが、アメリカで学んだ「VW」。この時「研究室のビジョンとして、皮膚や血液の細胞からあらゆる細胞をつくることができる万能細胞の作製を掲げた」と、改めてビジョンを持つことの大切さを説明しました。
異分野の人との交流の大切さ
奈良先端科学技術大学院大学で研究を進めるにあたり、「この万能細胞ができたら素晴らしいが非常に難しい。20年、30年かかるかもしれないし、一生頑張ってもできない可能性の方が高いかもしれない」と大きな壁に直面したという山中副代表理事。しかし、さまざまな分野の研究室が集まる同校で植物を研究する教授から植物は万能細胞だらけということを教えられたというエピソードを紹介し、「自分で勝手にブレーキを踏んでいたこと、異分野の人との交流の大切さに気づいた。孫正義育英財団はまさに異分野の人と交流できる場なので色々な人と交流してほしい」と話しました。このようなきっかけもあり、2006年にiPS細胞の作製に成功し、現在はiPS細胞の医療応用に取り組んでいることも説明しました。
人類の最大の使命は地球を守ること
最後に「最近著しく進歩している科学技術が人間の文化を追い抜き、人間を支配する日を心配している」という山中副代表理事は、「この美しい地球を守ることが人類の最大の使命」と話し、「科学技術に使いこなされるのではなく、使いこなして頑張ってほしい」と講演を締めくくりました。
講演後、現在プリンストン大学で進化遺伝学と行動生態学の研究を進めている財団生の羽場優紀さんがファシリテーターを務め、これまでの研究生活で直面した困難や研究の究極の目的など参加者から寄せられたさまざまな質問に山中副代表理事自ら答えました。そして最後に「皆さんの可能性は無限大です。素晴らしい能力、可能性を秘めていますからぜひこの財団を最大限活用して能力を十分発揮してほしい」と参加者に期待のメッセージを送りました。
動画:次の時代を創る若者へのメッセージ
※音声が小さい場合は、イヤフォンでの視聴を推奨します。